世代交代「ユズリハ」を部活動になぞらえて
アリスの谷村新司さんが、最後に書き残したのが「ユズリハ」という曲の詩だったと聞きました。2013年4月に発売されたアルバム「アリスⅪ」に収録されていますが、この「ユズリハ」というのは、主に暖地の山地などに生息する常緑広葉樹です。そして、なぜその名がつけられたかというと、常緑樹でありながら、新葉が芽吹くと古い葉はまだ濃い緑色をしていながらも新しい葉の下に控えるように残り、やがてステージの座を譲るように落葉していくからだそうです。
谷村さんはこの何とも奥ゆかしい樹木をタイトルに用い、限りある命と、最期を次の世代に譲るという潔い姿を人の人生になぞらえ、曲にしました。詩を紡いだとき、谷村さんが数年後に自分がこの世を去るなど考えてもいなかったと思います。でも、歌い手として最前線で活躍しつつも、後輩を思い、背中を押しながら、「後は頼んだよと」いつでもメインの座を譲るつもりで活動していたのでしょう。あの優しい語り口調を懐かしく思い出します。
漢字表記では「楪」「杠」「譲葉」「弓弦葉」と書くこともあるそうです。譲るという言葉そのものの「譲葉」もいいけれど、「弓弦葉」もステキです。8月から9月にかけて新葉が出そろうと、意を決したように古い葉がまとめて枯れるので、あと少ししたらその時期を迎えるわけですね。古い葉は、今どんな思いで周りの風景を見つめているのでしょうか。
譲るといえば、高校3年生の最後の大会を終え、部を引退した学生さんも多いと思います。私の大好きな高校野球では、新入生向けバッグを納品している「東京高校」が、東東京大会のベスト8に残りました。でも多くのチームが敗退し、すでに新チームが始動しています。3年生は、後輩たちにどんな気持ちで次のステージでの活躍を託したのでしょう。次こそ勝ってくれ、お前たちに任せたぞと、そんな気持ちでしょうか。
負けた瞬間、3年生は「ユズリハ」となります。もうきつい練習はしなくていいと思ったらホッとする・・・、でも何だか気持ちの切り替えがつかず、数日は宇宙遊泳状態。そんな学生さんも多いかもしれませんね。知人の男子学生は、「4日くらいボーっとして何も手につかなかった」と苦笑していました。そして、今では見事切り替えて、大学受験に向けてがんばっています。
たくさんの「ユズリハ」君、「ユズリハ」さん。後輩に夢を託し、次は新たなステージへの挑戦ですね。猛暑が続きます。勉強もいいけれど、冷房で体が冷えすぎないよう注意してくださいね。たまには体を動かし、リラックスした時間も過ごしてください。そして後輩君も、先輩の思いを感じながら残す高校生活、悔いのないよう爆走してください!
最後に、谷村さんの作詞した「ユズリハ」に曲をつけたのは、もちろんアリスのメンバー・堀内孝雄さん。アルバム作品では2人で交互に歌っていますが、このほど堀内さんがリリースしたシングル曲(青二才)のカップリング(B面)で、ソロで歌い収録しています。興味があったら、ぜひ聞いてみてください。